注意
かなり攻めた見出しですが、必ず最後までお読みください。
読めば、何が言いたいのかわかるはずです。
はじめに
今回は、YouTube生配信「とびらじお」でも幾度となく取り上げてきた「広島(ひろしま)神楽」という呼称について、私なりの考察【決定版】をご紹介!
結論から言うと、「広島(ひろしま)神楽」なんて名前の神楽は存在しない。
近年、よく用いられるこの呼称だが、学術的根拠もない、はたまた使い分けすらも曖昧である。(問い合わせたところ、NPO法人広島神楽芸術研究所事務局及び一般社団法人広島県観光連盟より、上記の旨のご回答有り。)
つまり、この呼称はあくまでも矛盾にまみれた“通称・愛称”であって、正式な名称ではない。
もちろん、神楽団体が継承区分として「広島(ひろしま)神楽」と定めているところなんて見たことも聞いたこともない。
これまで私は
広島神楽=芸北神楽
ひろしま神楽=広島県内のすべての神楽
という認識だったが、見事に違っていたようだ。
ひらがな、漢字、どちらの表記にしても
「広島県内の神楽、広島県のもつ魅力としての神楽」
を指すようだ。
意識調査
以前、このような意識調査をした。
Twitter,Instagramでのアンケート機能を用いて、「『広島(ひろしま)神楽』という呼称に違和感・矛盾を感じたことが1度でもある。」か否かのアンケートをとると…。
ある程度、調査方法に偏りがある可能性もあり、これが正しい指標になるとは考え難いが、とはいえ調査をしてみると、私が予想をしていたよりも多くの人が“違和感”や“矛盾”を感じていた。
またInstagram上での調査の際、「はい」と答えた方には、追加の質問を個別に送らせていただくと…。
Q.「どんな時に、またどのような違和感や矛盾を感じましたか?」
A. ・根拠や定義がはっきり示されていないこと自体に違和感を感じる。 ・きちんと区別した言い方のほうがいいのでは? (芸北神楽/比婆荒神神楽/安芸十二神祇/備後神楽/芸予諸島の神楽) ・「広島」というのであれば、県下全体の神楽を指し、保全継承に努めるべき。 ・たくさん種類があるにも関わらず、偏ったイメージになりそう。 ・商品化,ブランド化する必要があるのか? ・「芸北神楽」と「広島神楽」の違いがあまりよくわからない。 ・現在の神楽は、劇のようなものもあり「神楽」そのものの意味が勘違いされる恐れがある。 |
現状
今一度、確認するが、広島県には学術的根拠に基づいて5つの神楽がある。
詳しくはこちら☞https://kyumainotobira.com/kagura/
お気付きかもしれないが、表向き広島県内の神楽を指すというものの、実際は観光資源として扱いやすい「芸北神楽」がほとんどである。
ついでに、この記事を読んだ後ぜひ「広島神楽」と知らべてみてほしい。8・9割くらい「芸北神楽」じゃなかろうか。(笑)
実際に、この呼称が使われている事業等を見ていこう。
ひろしま神楽定期公演2021
より引用
ひろしま神楽振興支援事業
より引用
ひろたび
より引用
ひろしま神楽活動再開プロジェクト
より引用
ひろしま観光ナビ
より引用
問題点
現在、文化財保護法の改正や観光資源化も含めた観光業の強化などを要因とし、神楽文化も例外でなく、芸北神楽を中心とし、各種企業や県、はたまた文化庁などといった国も関わる事業において活用されることが増えてきた。
前述したように学術的根拠や使い分けが曖昧なものを行政をはじめとした多種の機関が広報活動などで大々的に呼ぶことに本当に問題点はないのだろうか?
⒈確立した定義・認識がないものをわからないまま発信すること自体問題であるのではないか?
まずもって、やはり呼称の定義や共通認識が確立していないものを、行政などの公的機関さえもが大々的に利用すること自体大問題である。
それによって、学術的根拠のあるものが知られないまま不特定多数の人に曖昧なまま広まることこそ、恐ろしいことではないでか。
現に新規の神楽ファンを中心に「芸北神楽」という区分さえ知られていなかったり、誤った認識が増えている。はたまた神楽を継承する身でありながら神楽団員までもが正しい知識のないまま発信してしまうという現状も発生している。
⒉芸北神楽はわざわざ県名を入れないと、広がらないのか?
前述したように、「広島(ひろしま)」と県名を入れることで、広島県が持つ魅力として発信することが目的とされているが、はたしてそれがないと広まらないのか?
例えば、島根県は島根の魅力発信のためだからと言って、大元神楽や石見神楽、出雲神楽などを「島根神楽」とひとくくりに言ったりすることなんて有り得ないし、そんなこともしなくとも出雲神楽,大元神楽は国の重要無形民族文化財、石見神楽は日本遺産に登録されるほど、広まり認められている。
ただ、時代は変わり、芸北神楽をとっても”芸北”とは言うが、現在では広島市など広島県内あらゆるところで継承されているため、もしかすると「芸北神楽」という呼称さえも時代遅れなのかもしれない。
そのための「広島神楽」という言い方かもしれないが、なのであれば新たな呼称にきちんとした学術的根拠や公的機関等のきちんとした定義が必要であろう。
やはりここでも、きちんとした定義や認識がないことが大きな問題だ。
⒊系統も種類も異なるものまでひとくくりにしてもよいのか?
芸北神楽だけをとっても、源流は同じとはいえ、いろんな系統・呼称がある。
それをひとまとめに呼ぶことさえも恐れ多いことかもしれないが、それに加えさらに系統の違うもの、土着信仰色の強い神楽さえもひとまとめに「広島(ひろしま)神楽」と呼ぶ挙句に、実際は全く活用されない神楽もあるという現状が、許されるものか。
やはり「筋が通ってない」のが現実だ。
簡単に取り上げても、これだけの課題や矛盾があるにもかかわらず、公的なところでさえも用いられている現状は大問題である。
もちろん、何度も言うが「神楽」自体、それぞれ様々な特色や特徴があるため、元来、分類や系統についてが曖昧なところが多くある。
しかしながら、一応研究などによって広島県内の5つの神楽の区分もそうだが、学術的根拠があって分類されており、現時点ではそれが正しいとされている。
そこに観光資源化などといったものを理由に根拠なく、呼称をはじめ好き勝手いじられるのは、ただのエゴでしかない。
広島県の持つ魅力として発展させるためのものが、結果として文化財の観光資源化の暴走を招き、若い神楽団、新たな神楽ばかり取り上げられ、歴史ある神楽団や文化的な価値が十分にある神楽の衰退・崩壊を招いていることも変えられない事実なのだ。
おわりに
何度も言うが、「広島(ひろしま)神楽」という神楽は存在しない!!!
もちろん、この呼称を全面的に否定するつもりはない。
しかしながら、この呼称が大きな問題点や危険を秘めているのも確かであり、すでにその影響は現実として起きている。
そのことを、まずは”知って”ほしい。
知って使う、知らずに使う。
これは大きな差がある。
歴史を学ばず、伝統を解さず、議論を放棄するものに明るい未来はない。
コロナ禍で、神楽に触れられず寂しい日々だからこそ、神楽の奥深さ、新たな面白さを発見するチャンスに。
知ることが新たな楽しみことにつながり、人に紹介できるようになり、神楽ファンや新たな後継者を増やし、みなさんが大好きな神楽を守ることにつながる。
関連情報
【とびらじお】
#10 https://youtu.be/lFoN1e-oxaU
#11 https://youtu.be/piMiO74OAwU
【神楽ポータルサイトKAGURAの社(特定非営利活動法人 広島神楽芸術研究所)】
https://www.npo-kagura.jp/
【ひろしま観光ナビ「広島神楽早わかり」(一般社団法人広島県観光連盟運営)】
https://www.hiroshima-kankou.com/feature/kagura/guide
【徹底解剖!ひろしまラボ「水曜日の夜は″広島神楽″へ行ってみよう」(広島県 総務局ブランド・コミュニケーション戦略チーム管理)】
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/lab/topics/20210421/02/